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執筆者の写真仲田歯科医院

むし歯の予防のために家族から子供へのむし歯菌の感染に神経質になるのは止めましょう!

 随分以前から、乳幼児のむし歯予防策として、


「食べ物の口移しや噛み与えをしない」、

「離乳食の味や温度のチェックを乳幼児用のスプーンで行わない」、

「お箸やスプーンの共有はしない」

といった情報が広がっています。また、


「家族と乳幼児の間のキスを控える」、

「家族は熱い食べ物などに息を吹きかけて与えてはいけない」

という情報もあるようです。


「家族から乳幼児にむし歯菌(ミュータンス菌)をうつす機会を減らすことが、むし歯予防の第1歩だ」

として、このような予防策が広まっています。


 では、この予防策に、どれほど効果があるのでしょうか?


 これを調べるために、東北大学国際歯科保健学研究室が、3 歳児の歯科健診に来た保護者に「食器を共有したことがあるか?」「子供に口移しで食事を与えたことがあるか?」とアンケートを実施しました。


 3000件ほどの回答と子供の3 歳児健診のむし歯の状況を照らし合わせて分析した結果、

「食器を共有しない」、「子供に口移しで食事を与えない」と家族が努めても、子供のむし歯の有無とは関連がないことがわかりました。


 どうやら、このむし歯予防策は、それほど効果のあることではなさそうです。


 さらに、九州大学口腔健康増進学科予防・公衆衛生歯科学研究室は、

離乳食を始める前の生後 4 か月の子どもに、親の口のなかの細菌がうつっていることを確認しました。

日々の親子のスキンシップを通して子どもは親の唾液に接触しますので、食器の共有を避けるなどの方法で口腔細菌の感染を防ごうとしても仕方ないことです。

  

 ところで、人に菌がうつることを「感染」と言いますが、感染は身体にとって不利益なことと考えがちですが、有益に働くこともあります。


細菌やウイルスによってさまざまな病気を発症することや、むし歯菌(ミュータンス菌)が母から子にうつることは、不利益なことの一つです。


一方、有益に働くものがあることもわすれてはなりません。この代表は、皮膚や腸に常にいついてる常在菌の感染です。常在菌がいつくことで、バリア機能を保って、刺激から身体を守って新たな病原菌の侵入を食い止めています。これは身体にとって必要で有益な感染です。


 2023年8月に、医学雑誌の「アレルギーと臨床免疫学(Journal of Allergy and Clinical Immunology)」に「乳児期の唾液接触と学童期のアレルギー発症」と題する和歌山県立医科大学の論文が発表されました。この論文は、幼児期に家族で共用の食器を使ったり、親がおしゃぶりを吸ったりすることで、家族の唾液に接触することが、学齢期の子供のアレルギー発症、特にアトピーやアレルギー性鼻炎のリスクを軽減する可能性があると発表しています。これはおそらく、親から子への口腔細菌の感染が有益に働いているのでしょう。

 

 ですから、家族から子供へのむし歯菌の感染に神経質になるのは止めましょう。このことに神経質になっていると、かえって、アトピーやアレルギー性鼻炎のリスクを高めかねません。


 仮に、親から子供にむし歯菌がうつったとしても、砂糖を控えて、親が毎日仕上げみがきを行って歯垢を除去し、またフッ素を利用することでむし歯を予防することができます。特に、フッ素の利用は、う蝕予防効果が確認されている方法ですから、適切にフッ素を使ってください。詳しくは、当院のブログ、1歳半から3歳までにむし歯予防でできること 、むし歯予防に本当に効果的な歯みがき法&PMTC を参考にしてください。


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